出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
龍はもう半分無くなった弁当を持ったまま訝しげな顔を深雪に見せた。
「いや、さすがに実乃莉だって面倒だろ」
素っ気なくそれだけ言うと龍はまた残りを口に運んでいる。
「そんなことないです! 一人分も二人分も変わりませんから!」
必死に訴える実乃莉の勢いに、驚いたように龍は目を開いている。だが、深雪のほうは意味深な笑みを浮かべて実乃莉に続いた。
「そうよねぇ。意外と一人分だけ作るのも二人分作るのも、手間は一緒よね。ってことで実乃莉ちゃん。私からもお願いできないかな? 社長が倒れるようなことがあれば困るのは社員だし。ね?」
「もちろんです。その……龍さんの口に合うかはわかりませんが、よかったら私に作らせてもらえませんか?」
胃袋を掴もうなんてことはもちろん思っていない。ただ、自分が役に立てるならそれだけで満足だ。
「いや、けど……」
龍は実乃莉の負担を心配していると言いたげな、憂いた表情で口籠る。
「じゃあ、一週間お試しはどう? 実乃莉ちゃんが大変ならもうちょっと短くてもいいし」
助け船を出すように深雪が提案すると、実乃莉はそれを聞いて頷いた。
「どうですか? 無理に……とは言いませんが……」
「わかった。じゃあ頼むな」
龍は表情を緩めると実乃莉に笑いかけた。
その日の退勤後、実乃莉はさっそく寄り道をした。
元々食材も少なくなっていたし、自分の持っている弁当箱の量では到底足りそうにない。龍を思い浮かべながら新しい弁当箱を買い、食材を買い、それだけで心を躍らせてしまう。
いつもより一時間ほど遅い時間。最寄り駅から自宅まで、買い物袋を下げて歩く実乃莉は軽い足取りで歩いていた。
住宅街だが、どちらかと言えば賑やかとは程遠い閑静な住宅街にある実乃莉の家。まだそう遅い時間ではないが、歩いているのはいつも見かける犬の散歩をする近所の住人だけだった。
(……気のせい?)
実乃莉はふと視線を感じ振り返る。けれどそこには誰もいない。
不思議に思いながら家にたどり着くと、実乃莉は門のセキュリティを解除した。
「いや、さすがに実乃莉だって面倒だろ」
素っ気なくそれだけ言うと龍はまた残りを口に運んでいる。
「そんなことないです! 一人分も二人分も変わりませんから!」
必死に訴える実乃莉の勢いに、驚いたように龍は目を開いている。だが、深雪のほうは意味深な笑みを浮かべて実乃莉に続いた。
「そうよねぇ。意外と一人分だけ作るのも二人分作るのも、手間は一緒よね。ってことで実乃莉ちゃん。私からもお願いできないかな? 社長が倒れるようなことがあれば困るのは社員だし。ね?」
「もちろんです。その……龍さんの口に合うかはわかりませんが、よかったら私に作らせてもらえませんか?」
胃袋を掴もうなんてことはもちろん思っていない。ただ、自分が役に立てるならそれだけで満足だ。
「いや、けど……」
龍は実乃莉の負担を心配していると言いたげな、憂いた表情で口籠る。
「じゃあ、一週間お試しはどう? 実乃莉ちゃんが大変ならもうちょっと短くてもいいし」
助け船を出すように深雪が提案すると、実乃莉はそれを聞いて頷いた。
「どうですか? 無理に……とは言いませんが……」
「わかった。じゃあ頼むな」
龍は表情を緩めると実乃莉に笑いかけた。
その日の退勤後、実乃莉はさっそく寄り道をした。
元々食材も少なくなっていたし、自分の持っている弁当箱の量では到底足りそうにない。龍を思い浮かべながら新しい弁当箱を買い、食材を買い、それだけで心を躍らせてしまう。
いつもより一時間ほど遅い時間。最寄り駅から自宅まで、買い物袋を下げて歩く実乃莉は軽い足取りで歩いていた。
住宅街だが、どちらかと言えば賑やかとは程遠い閑静な住宅街にある実乃莉の家。まだそう遅い時間ではないが、歩いているのはいつも見かける犬の散歩をする近所の住人だけだった。
(……気のせい?)
実乃莉はふと視線を感じ振り返る。けれどそこには誰もいない。
不思議に思いながら家にたどり着くと、実乃莉は門のセキュリティを解除した。