出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
実乃莉が呆気に取られているあいだに、龍はスマートフォンをカシャカシャいわせて写真を何枚か撮っている。
「よし。深雪が帰って来たら見せてやろう。こんな美味そうな飯、いいだろうって」
きっと、幼い頃はこんな屈託のない笑顔を見せる少年だったのだろう。そんなことを思わせるくらい、龍は無邪気に笑っていた。
「ま、まだ美味しいかどうかは……」
「いや、絶対美味いに決まってる。じゃあ、いただきます」
龍は手を合わせると箸を持つ。実乃莉は自分の弁当箱の蓋を開けることすら忘れて龍に見入っていた。
まず龍は、おかずだけ詰められている箱を持った。
「どれが一番おすすめ?」
箸を持ったままの龍に尋ねられ、実乃莉はしばし考えた。
「……鶏のつくね焼きはどうですか? 蓮根のすりおろしとみじん切りを入れて食感を楽しめるように工夫しました。あと大葉がアクセントで……」
そう説明すると、龍は詰めやすいよう細長い形にしたつくねを持ち上げた。心臓が飛び出しそうなほどドキドキする実乃莉の前で、龍はそれを一口かじる。
龍は無言で飲み下すと、また一口、二口と一瞬に口に放り込んだ。
「……。美味い。これ、すごく美味いな。食感もいいし、めちゃくちゃ好みの味だ」
龍はしみじみとした様子で実乃莉に顔を向けた。
「本当ですか?」
「嘘なんか言わないって。次はどれにするかな?」
龍は笑いながら言うと、今度は茄子の煮浸しに手をつけた。それをまた口に入れると、また笑う。
「これ、ピリっとしてていいな。やばい、酒飲みたい」
「唐辛子が隠し味に入れてあるんです」
放心したように返す実乃莉に、龍は言う。
「そうか、いい味してる。実乃莉も食べろよ?」
自分の弁当箱の蓋すら開けず、緊張した面持ちで自分を見ていた実乃莉に龍は声を掛ける。
「あっ、はい」
緊張感を緩めた実乃莉は、金縛りから解けたように弁当箱に手を掛けた。そのあいだも龍は次々とご飯を口に運んでいた。
実乃莉も食べ始めると、部屋の中は静かになる。けれど、家での食事のように気が詰まるものではない。
龍が本当に、心の底から味わってくれているのが伝わり、温かい気持ちになった。
「よし。深雪が帰って来たら見せてやろう。こんな美味そうな飯、いいだろうって」
きっと、幼い頃はこんな屈託のない笑顔を見せる少年だったのだろう。そんなことを思わせるくらい、龍は無邪気に笑っていた。
「ま、まだ美味しいかどうかは……」
「いや、絶対美味いに決まってる。じゃあ、いただきます」
龍は手を合わせると箸を持つ。実乃莉は自分の弁当箱の蓋を開けることすら忘れて龍に見入っていた。
まず龍は、おかずだけ詰められている箱を持った。
「どれが一番おすすめ?」
箸を持ったままの龍に尋ねられ、実乃莉はしばし考えた。
「……鶏のつくね焼きはどうですか? 蓮根のすりおろしとみじん切りを入れて食感を楽しめるように工夫しました。あと大葉がアクセントで……」
そう説明すると、龍は詰めやすいよう細長い形にしたつくねを持ち上げた。心臓が飛び出しそうなほどドキドキする実乃莉の前で、龍はそれを一口かじる。
龍は無言で飲み下すと、また一口、二口と一瞬に口に放り込んだ。
「……。美味い。これ、すごく美味いな。食感もいいし、めちゃくちゃ好みの味だ」
龍はしみじみとした様子で実乃莉に顔を向けた。
「本当ですか?」
「嘘なんか言わないって。次はどれにするかな?」
龍は笑いながら言うと、今度は茄子の煮浸しに手をつけた。それをまた口に入れると、また笑う。
「これ、ピリっとしてていいな。やばい、酒飲みたい」
「唐辛子が隠し味に入れてあるんです」
放心したように返す実乃莉に、龍は言う。
「そうか、いい味してる。実乃莉も食べろよ?」
自分の弁当箱の蓋すら開けず、緊張した面持ちで自分を見ていた実乃莉に龍は声を掛ける。
「あっ、はい」
緊張感を緩めた実乃莉は、金縛りから解けたように弁当箱に手を掛けた。そのあいだも龍は次々とご飯を口に運んでいた。
実乃莉も食べ始めると、部屋の中は静かになる。けれど、家での食事のように気が詰まるものではない。
龍が本当に、心の底から味わってくれているのが伝わり、温かい気持ちになった。