出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「実乃莉?」
その行動に訝しむような龍の声がする。それに顔を上げることなく実乃莉は切り出した。
「さっきより……痛みもかなり引きました。みなさんは応接間でお待ちください。私は一度部屋に戻りますので」
痛みを堪えながら実乃莉は踵を返す。
「実乃……っ」
引き留めようと声を発した龍の横から「龍!」と深雪が呼びかけた。
「私が付き添うから。洸と一緒に作戦会議でもしてなさい」
その声は明るいものではなく、どこか怒りを含んでいるように聞こえる。
先に二階にある自室に向かい足を引きずりながら歩く実乃莉の元へ、深雪は駆け寄った。
「実乃莉ちゃん、こっち支えるから」
実乃莉の左側に寄ると、深雪は実乃莉の腕を引く。
「あ……りがとう、ございます」
階段には手すりもあるし、部屋は階段のすぐ横。深雪に助けてもらいながらゆっくり階段に向かうと登り出す。
「皆上。行くぞ」
「…………あぁ」
そんなやりとりを遠くに聞きながら、実乃莉は必死で歩みを進めた。
部屋に着くと、深雪が扉を開ける。壁に伝いながら実乃莉は部屋に入り明かりを付けた。
「実乃莉ちゃんは座って。言ってくれれば私が荷物の用意するから」
実乃莉の体を支えながら近くにあるベッドまで連れて行くと深雪は言う。
「すみません。深雪さん……」
ベッドに腰掛けた実乃莉はそのまま肩を落とし俯いた。そんな実乃莉の真ん前に深雪は座ると、膝に乗る手にそっと自分の手を重ねた。
「実乃莉ちゃんは……。龍のこと、どんなふうに見えてる?」
穏やかに尋ねられ、実乃莉は無言で顔を上げる。その問いに戸惑っていると、深雪は笑って続けた。
「そうねぇ。群れを束ねるライオン? 龍って、ほんと獅子座の中の獅子座だもんね」
フフっと笑いながら深雪は実乃莉の顔を覗き込む。言われた通り、龍に対するイメージはまさにそんな感じだ。コクリと頷くと、深雪は優しく笑みを浮かべた。
「でもね、本当は違うの。私から言わせたら、怖がりの猫ちゃん」
「猫、ちゃん?」
実乃莉は目を丸くして呟く。あまりにも龍からかけ離れている気がしたからだ。
「そうよぉ。ここぞってときに一歩踏み出せないのよ。過去それで痛い目見てるのに、まだ治らないんだから。ほんと、バカよ。あいつは」
深雪は戯けたように言ったあと、最後は少し怒っているように見えた。
その行動に訝しむような龍の声がする。それに顔を上げることなく実乃莉は切り出した。
「さっきより……痛みもかなり引きました。みなさんは応接間でお待ちください。私は一度部屋に戻りますので」
痛みを堪えながら実乃莉は踵を返す。
「実乃……っ」
引き留めようと声を発した龍の横から「龍!」と深雪が呼びかけた。
「私が付き添うから。洸と一緒に作戦会議でもしてなさい」
その声は明るいものではなく、どこか怒りを含んでいるように聞こえる。
先に二階にある自室に向かい足を引きずりながら歩く実乃莉の元へ、深雪は駆け寄った。
「実乃莉ちゃん、こっち支えるから」
実乃莉の左側に寄ると、深雪は実乃莉の腕を引く。
「あ……りがとう、ございます」
階段には手すりもあるし、部屋は階段のすぐ横。深雪に助けてもらいながらゆっくり階段に向かうと登り出す。
「皆上。行くぞ」
「…………あぁ」
そんなやりとりを遠くに聞きながら、実乃莉は必死で歩みを進めた。
部屋に着くと、深雪が扉を開ける。壁に伝いながら実乃莉は部屋に入り明かりを付けた。
「実乃莉ちゃんは座って。言ってくれれば私が荷物の用意するから」
実乃莉の体を支えながら近くにあるベッドまで連れて行くと深雪は言う。
「すみません。深雪さん……」
ベッドに腰掛けた実乃莉はそのまま肩を落とし俯いた。そんな実乃莉の真ん前に深雪は座ると、膝に乗る手にそっと自分の手を重ねた。
「実乃莉ちゃんは……。龍のこと、どんなふうに見えてる?」
穏やかに尋ねられ、実乃莉は無言で顔を上げる。その問いに戸惑っていると、深雪は笑って続けた。
「そうねぇ。群れを束ねるライオン? 龍って、ほんと獅子座の中の獅子座だもんね」
フフっと笑いながら深雪は実乃莉の顔を覗き込む。言われた通り、龍に対するイメージはまさにそんな感じだ。コクリと頷くと、深雪は優しく笑みを浮かべた。
「でもね、本当は違うの。私から言わせたら、怖がりの猫ちゃん」
「猫、ちゃん?」
実乃莉は目を丸くして呟く。あまりにも龍からかけ離れている気がしたからだ。
「そうよぉ。ここぞってときに一歩踏み出せないのよ。過去それで痛い目見てるのに、まだ治らないんだから。ほんと、バカよ。あいつは」
深雪は戯けたように言ったあと、最後は少し怒っているように見えた。