出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「実乃莉が……凄くショック受けた顔してたって……。そんなつもりじゃなかったんだ。ほんと、ごめん」
心苦しいと言わんばかりに沈んだ声色に、実乃莉は首を小さく横に振る。
「そんなに謝らないでください。でも……。どうして、その……」
聞きたいことは一つなのに、喉の奥に言葉がつかえて出てこない。龍は自分を傷つけるつもりではなかった。けれど勝手に傷ついたのは自分で、なぜと問われたら答える自信はない。
戸惑っている実乃莉を慰めるように、龍は表情を緩ませる。
「呆れるだろ? いい格好ばかりしてさ。情け無い姿を見せたくないって思ったんだろうな。無意識に」
どうして龍が情け無いないのだろう? 情け無いのは、小さな子どものように抱えられていた自分のほうなのに。実乃莉は龍を見上げたまま、きょとんと目を開いた。
「さっき深雪にさ、こう言われた。自分のことを見て見ぬふりするのやめろって」
「見て見ぬふり?」
それがどういうことか掴めず実乃莉はそれを復唱する。龍はまた決まりの悪そうな表情を浮かべていた。
「自分の感情にってこと。わかってるのに認めようとしないのが俺の悪い癖だ。だからいつも手遅れで、掴めたはずのものはいつのまにか自分の手をすり抜けてる」
深雪が言った、『過去痛い目をみた』を思い出しているのか、龍は苦々しい表情を見せる。それに見入っていると、龍は視線を実乃莉に向けた。
その瞳にはもう、戸惑いも迷いもないように見える。実乃莉はただ静かに、その問いの答えが紡ぎ出されるのを待った。
「もう気取ったり見栄を張ったりするのはおしまいだ。自分の感情に忠実になろうと思う」
そう言い切ったその瞳の奥が、陽炎のように揺らめいている。それに魅了され目を離せない実乃莉の頰に、龍の大きな手がそっと触れた。
「実乃莉が大切なんだ。頼られて、とてつもなく嬉しいし、離したくないって思う自分がいる。そんなガキみたいなこと考えてたら急に恥ずかしくなって。だから思わず顔を背けた。けど……やっとわかった」
龍の手から伝わる体温は、その言葉と共に熱を帯びる。実乃莉はその熱さを直に感じながら唇を震わせる。
「何が……ですか?」
頰を滑り降りた指は、その唇をそっと撫でる。龍は実乃莉に愛おしげに笑みを向けると言った。
「お前のことが、好きなんだって」
心苦しいと言わんばかりに沈んだ声色に、実乃莉は首を小さく横に振る。
「そんなに謝らないでください。でも……。どうして、その……」
聞きたいことは一つなのに、喉の奥に言葉がつかえて出てこない。龍は自分を傷つけるつもりではなかった。けれど勝手に傷ついたのは自分で、なぜと問われたら答える自信はない。
戸惑っている実乃莉を慰めるように、龍は表情を緩ませる。
「呆れるだろ? いい格好ばかりしてさ。情け無い姿を見せたくないって思ったんだろうな。無意識に」
どうして龍が情け無いないのだろう? 情け無いのは、小さな子どものように抱えられていた自分のほうなのに。実乃莉は龍を見上げたまま、きょとんと目を開いた。
「さっき深雪にさ、こう言われた。自分のことを見て見ぬふりするのやめろって」
「見て見ぬふり?」
それがどういうことか掴めず実乃莉はそれを復唱する。龍はまた決まりの悪そうな表情を浮かべていた。
「自分の感情にってこと。わかってるのに認めようとしないのが俺の悪い癖だ。だからいつも手遅れで、掴めたはずのものはいつのまにか自分の手をすり抜けてる」
深雪が言った、『過去痛い目をみた』を思い出しているのか、龍は苦々しい表情を見せる。それに見入っていると、龍は視線を実乃莉に向けた。
その瞳にはもう、戸惑いも迷いもないように見える。実乃莉はただ静かに、その問いの答えが紡ぎ出されるのを待った。
「もう気取ったり見栄を張ったりするのはおしまいだ。自分の感情に忠実になろうと思う」
そう言い切ったその瞳の奥が、陽炎のように揺らめいている。それに魅了され目を離せない実乃莉の頰に、龍の大きな手がそっと触れた。
「実乃莉が大切なんだ。頼られて、とてつもなく嬉しいし、離したくないって思う自分がいる。そんなガキみたいなこと考えてたら急に恥ずかしくなって。だから思わず顔を背けた。けど……やっとわかった」
龍の手から伝わる体温は、その言葉と共に熱を帯びる。実乃莉はその熱さを直に感じながら唇を震わせる。
「何が……ですか?」
頰を滑り降りた指は、その唇をそっと撫でる。龍は実乃莉に愛おしげに笑みを向けると言った。
「お前のことが、好きなんだって」