出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
時間はちょうどお昼どき。ランチだとしてもドレスコードが設定されている店はあり、そういう店に行くものだと実乃莉は思っていた。
けれど実際には、その予想を大幅に超えていた。
由香の店を出て二十分ほど。一度幹線道路に出たが、また路地に入る。並木の続く細い道を緩やかに登り、突き当たった先には車が十台ほど止められそうな開けた場所があった。行く手を遮るように聳え立つ古い鉄門を龍が開ける。車はそれをくぐり、着いた場所に実乃莉は圧倒されていた。
「実乃莉。玄関開けてくるから少し待っててくれ」
龍は鍵の束を持ち運転席から出ると、飴色で艶のある木製の扉に向かっていた。
実乃莉は車のドアを開ける。周りが舗装されていないからか、頰を撫でる風は秋らしく柔らかだ。それを感じながら体を外に向け、目の前にそびえ立つ建物を仰ぎ見た。
(綺麗……)
歴史の教科書にでも載っていそうな白亜の洋館。明治、大正時代を思わせる木造二階建てのその邸宅は、文化財として保存されていそうなほど美しい。
それにしても、ここはレストランだと言われても納得するが、龍が鍵を開けに行っている時点でそうではない。周りに車の一台も止まっておらず、周りからは、ただ常緑樹の木々が葉を揺らす音だけが聞こえていた。
「どうした?」
戻ってきた龍は、放心したように景色を眺めていた実乃莉に優しく笑いかけた。
「立派な建物で……見惚れてしまって」
「そっか。気に入ってくれて良かった。明治末期に建てられたんだと。皆上家の旧宅。今はゲストハウスや別荘代わりに使ってるんだ」
「……スケールが違います……」
実乃莉は自分の家との違いをまざまざと見せつけられたようで唖然とする。そんな実乃莉に、龍はどことなく浮かない表情を一瞬だけ浮かべた。
「別に俺が凄いわけでもなんでもない。たまたまそういう家に生まれただけだ。それより、中に入ろう」
龍はそう言って笑顔で両腕を差し出した。
(やっぱり……龍さんはあまり家のことを言われたくないんだ……)
その理由はわからない。けれどそれに触れるのはやめよう。実乃莉はそう思った。
「龍さん、あの。もしかして……?」
実乃莉はあえて尋ねてみる。この様子は、ただ自分を車から降ろすためだけじゃない気がしたからだ。
「ん? 他にも誰もいないし、段差も多いからな。もちろん実乃莉を歩かせるつもりはないけど?」
龍はしれっとしながらも、明るく声を上げていた。
けれど実際には、その予想を大幅に超えていた。
由香の店を出て二十分ほど。一度幹線道路に出たが、また路地に入る。並木の続く細い道を緩やかに登り、突き当たった先には車が十台ほど止められそうな開けた場所があった。行く手を遮るように聳え立つ古い鉄門を龍が開ける。車はそれをくぐり、着いた場所に実乃莉は圧倒されていた。
「実乃莉。玄関開けてくるから少し待っててくれ」
龍は鍵の束を持ち運転席から出ると、飴色で艶のある木製の扉に向かっていた。
実乃莉は車のドアを開ける。周りが舗装されていないからか、頰を撫でる風は秋らしく柔らかだ。それを感じながら体を外に向け、目の前にそびえ立つ建物を仰ぎ見た。
(綺麗……)
歴史の教科書にでも載っていそうな白亜の洋館。明治、大正時代を思わせる木造二階建てのその邸宅は、文化財として保存されていそうなほど美しい。
それにしても、ここはレストランだと言われても納得するが、龍が鍵を開けに行っている時点でそうではない。周りに車の一台も止まっておらず、周りからは、ただ常緑樹の木々が葉を揺らす音だけが聞こえていた。
「どうした?」
戻ってきた龍は、放心したように景色を眺めていた実乃莉に優しく笑いかけた。
「立派な建物で……見惚れてしまって」
「そっか。気に入ってくれて良かった。明治末期に建てられたんだと。皆上家の旧宅。今はゲストハウスや別荘代わりに使ってるんだ」
「……スケールが違います……」
実乃莉は自分の家との違いをまざまざと見せつけられたようで唖然とする。そんな実乃莉に、龍はどことなく浮かない表情を一瞬だけ浮かべた。
「別に俺が凄いわけでもなんでもない。たまたまそういう家に生まれただけだ。それより、中に入ろう」
龍はそう言って笑顔で両腕を差し出した。
(やっぱり……龍さんはあまり家のことを言われたくないんだ……)
その理由はわからない。けれどそれに触れるのはやめよう。実乃莉はそう思った。
「龍さん、あの。もしかして……?」
実乃莉はあえて尋ねてみる。この様子は、ただ自分を車から降ろすためだけじゃない気がしたからだ。
「ん? 他にも誰もいないし、段差も多いからな。もちろん実乃莉を歩かせるつもりはないけど?」
龍はしれっとしながらも、明るく声を上げていた。