愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
「ウッドフェンスの一角が、すっかり見えるほどなのです。あれはもう、見逃せるものではありませんわ。だから私、いてもたってもいられなくなって。お仕事中のペリウィンクルさんを連れて、こうして参りましたの」

「そうでしたか……ハニーサックルは贈る予定がないから、構わないと思ったのだけれど。箱庭の景観を損ねるほど盗られてしまうのは、問題ですわね」

「花を盗むことは、校則でも禁止されています。ローズマリー様が良くても、学校へ報告しなくてはいけませんわ」

 いつもならばやんわりと言ってくるセリだが、校則違反ともなれば違うようだ。
 彼女にしてはやや強い物言いに、ローズマリーは驚いたようにほんの少し目を見開いて、それから満足そうに微笑んだ。

「そうですわね。ごめんなさい、セリ様。わたくし、大ごとにしたくなかったものだから……。でも、学校へ報告することにしますわ」

「ええ、そうしてください」

 セリははんなりと微笑んで頷いた。
 もしかしたら、ローズマリーはこの件を秘するのではないか。
 そう思っていたからこそ、素直に話を聞き入れてくれた彼女に、セリは安心したようだ。
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