愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです！

第26話 ヒロインの噂③

　すごく。すごく今更すぎるが、ペリウィンクルは気付いてしまった。

「ヒロインをいじめるの、忘れてた！」

　とんだ失態である。
　この国へ来た時、不安がるローズマリーへ高らかに宣言した自分を殴ってやりたい。

（なにが、“いざとなったら私がやりますし”だよぉぉ！）

　いざどころか、すっかり頭から抜けていたペリウィンクルである。
　今更だけどやらないよりはマシか？　と慌てて思索するペリウィンクルの背後で、呆れ混じりのため息が吐き出された。

「なんだ、そんなことか」

「そんなことって……そんなことじゃ済まされない失態だよ？　作戦失敗じゃない！……あ」

　とんでもない失言に、ペリウィンクルは泥まみれの軍手をしたまま口を押さえた。
　唇と顎に若干土が付いたが、それに構っている余裕はない。
　なぜなら──、

「ほぅ……作戦、とな？」

　ヴィアベルの不機嫌そうな声が、ペリウィンクルの耳に届く。
　怖いもの見たさの精神で後ろを振り向けば、人の姿になったヴィアベルが、それはもう壮絶なまでに艶やかな笑みを浮かべて立っていらっしゃった。