愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!

第30話 妖精と不幸な女の子①

 今の彼女からは想像もできないが、六歳のペリウィンクル・ルーは、不幸な女の子だった。
 馬車の事故で両親をいっぺんに喪い、その両親の葬儀の場で父方の祖父母から「おまえの母のせいで息子は死んだ!」と罵られ、父の元婚約者だという女性から平手打ちされたのだ。

 ペリウィンクルの両親は、駆け落ち婚だった。
 春の国の貴族令息だった父は、婚約者がいる身でありながら庭師であった母と恋に落ち、望まない結婚から逃げた。
 その結果生まれたのが、ペリウィンクルというわけである。

 ペリウィンクルは、何も知らなかった。
 仲睦まじい両親が世間から後ろ指をさされるような間柄であることも、祖父母がいることも、父に婚約者がいたことも。

 罵られ、ぶたれ、そうして彼女が学んだことは、すべての諸悪の根源は自分である、ということだった。

 両親を喪っただけでも不幸なのに、その両親の罪まで負うことになるとは。
 六歳の身には、あまりにもむごい仕打ちである。

 とはいえ、妖精であるヴィアベルが知ったことではない。
 左頰を真っ赤に腫らし、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした子どもを見ても、「ふぅん」と眺めただけだった。
< 198 / 322 >

この作品をシェア

pagetop