愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 三人そろって、特大のため息を吐く。
 そんな契約者たちを見ていた妖精たちは、意を決したように頷き合うと、多肉植物のようなぷっくりした手をギュッと握って、えいやっと声を上げた。

『ヴィアベルは月明かりの妖精だよ』

 とは、ローズマリーの契約している子ブタの妖精だ。

『ペリウィンクルは彼の番なのです』

 続いてセリが契約しているキツネ耳の妖精が言い、

『今はちょっと諸事情で距離を置いているから、放っておけって言っているわ』

 最後はサントリナが契約しているくらげの姿をした妖精が締め括った。

 衝撃の事実を聞かされて、三人は驚きのあまり声もでない。
 その静寂を破ったのは、ペリウィンクルだった。

 最初に叫び声が、それから物が倒れるような音が響く。
 弾かれるようにサントリナが駆け出し、そのあとをローズマリーとセリが追いかける。

「ペリウィンクルさん!」

 だが、遅かった。
 窓が割れ、家具が倒れ、物が散乱した室内に、ペリウィンクルはいなかったのである。

 そして、時同じくして──スルス内に警鐘が鳴り響いた。
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