愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 栄養剤の対価にするには過ぎたお願いだったのだろうか。
 それならそうと先に言ってほしかったと、ペリウィンクルは拳を床に叩きつけた。
 悔しげに唇を噛む彼女は目が据わっていて、間近で目撃してしまったスヴェートはヒッと声を上げる。

「というか! どうして私とヴィアベルが食べられなくちゃいけないの? リコリス様がソレル殿下とくっつくのに、私たちが命張らないといけないほど好感度低かったわけ? それとも、栄養剤に何か不備でもあって、その仕返しってこと?」

 もはや遠慮もなにもない。
 怒鳴りつけるように問いかけてきたペリウィンクルに、スヴェートはきょとんとした顔で答えた。

「いえいえ、とんでもない。好感度なんて、媚薬でちょちょいのちょいでした。栄養剤も、すばらしいものでしたよ。ええ、すばらしいからこそ、執着されたのです」

 栄養剤がすばらしい出来だったから、名もなき生き物は二人を食べようとしている。
 そう聞かされて、「ああ、そうなんだ!」と納得する者は何人いるのだろう。
 少なくともペリウィンクルはなに一つ納得できないし、理解できていない。

「いや、だからどうしてそうなるのよ。こういう場合はさ、栄養剤を作った私たちじゃなくて、育てていたあなたが真っ先に狙われるのが定番ってもんでしょ」
< 283 / 322 >

この作品をシェア

pagetop