愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 例えるなら、スヴェートはワンオペ育児に疲れ切った母親で、家庭を顧みないダメ夫がリコリス、二人の子どもが名もなき生き物、といったところだろうか。

(だとすれば、栄養剤はミルクで、私とヴィアベルはミルクを作った人ってことになるわけで……いや、どう考えても食べられる理由にならないな⁉︎)

 それでも、ワンオペ育児に疲れた母親の末路は決して明るくないことを理解しているペリウィンクルは、目の前のウサギを気の毒そうに眺めた。
 黄色い毛が前よりくすんで見えるのは気のせいだろうか。
 ペリウィンクルの気遣うような視線を受け、スヴェートは目をわずかに伏せた。

「あのすばらしい栄養剤の作り手ならば、足りないものを補ってくれる。名もなき生き物はそう思っているのです。あなたやヴィアベルを食べることで、人や妖精のような存在になれるのだと……彼は信じているのです」

 名もなき生き物は、およそ人とも妖精とも似つかない見た目だった。
 グニャグニャと動く姿は軟体動物のようであり、ドロドロとした表面はヘドロをまとっているよう。
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