愛され庭師は悪役令嬢に巻き込まれ……いえ、今世こそ幸せにしてあげたいです!
 一途と言えば聞こえは良いが、春の国の王族としては最低最悪。
 こんなのが王位継承権を持っているかと思うと心配になってしまうが、そこは春の国の中枢部の、腕の見せ所に違いない。なんとか頑張ってもらいたいと祈るばかりである。

 カツン、と大講堂の床を蹴る音がする。
 再びペリウィンクルが階下を見ると、ローズマリーがソレルの前へ出ようとしていた。
 波が引くように、人々が左右に避ける。

 膝を折り、深々と令嬢らしい優雅な立ち居振る舞いで挨拶をしたローズマリー。ソレルはそんな彼女に、わずかにたじろいだ。

 ソレルを鼓舞するように、リコリスがピタリと寄り添う。
 これ見よがしに腕に絡んで胸を押し当てているのが、なんともあざとい。
 仲睦まじい様子を見せつけて、牽制しているつもりなのだろう。

(でも、そうはいかないんですよ)
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