聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!

3月初旬。


休日のある日、菜々は緊張した面持ちでスマホの画面を見つめていた。


矢嶋は国公立大学から昨日、合格通知を受け取ったらしい。


『よかったら、直接祝ってやって。』


そう夏樹から言われ、送られてきたのは矢嶋の電話番号。


『あいつ、夏休み明けにスマホを落として壊したらしくて。だからスマホ買い替えて、電話番号も変わってるよ。ラインも引き継ぎできなくて、初期化してアカウントも変わってるよ。』


――まさか、そんなことになってたなんて、思わなかったな。


夏樹から、事情を聞いた時は心底ホッとした。


嫌われたから、メッセージが未読のままになっていたわけではなかったのだ。


矢嶋の電話番号を入力した画面の通話ボタンを、やっとの思いで押した。


しばらく呼び出し音が鳴る。


――スマホの近くにいないのかな。


3回目の呼び出し音が鳴り終わった時、ようやく繋がった。

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