聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「あの…どこの大学に行くんですか?県内と東京と、どっちも受かったってことですよね…?」
『そうそう。…東京に行くよ。』
東京。
自分勝手だなと思いながらも、できれば近くの大学に通って欲しい、なんて思っていた。
が、それは叶わないようだ。
「そう…ですか。」
『寂しい?』
矢嶋のその言葉を聞いて、ぶわっと涙が溢れた。
『寂しい…です。もう会えない…の?』
――もう遅かった。矢嶋先輩、離れていっちゃう。
嗚咽を漏らしながら、なんとか言葉を続けようとするが、言葉が出てこない。
『…今から会う?』
矢嶋の声が受話器から聞こえ、菜々はコクコクと頷いてから言った。
『会いたい、です。』
『…俺も。』
そう言うと矢嶋は、菜々達が住む本町の最寄り駅を指定した。
『とりあえず、俺がそっちに向かうよ。駅で待ってて。』
そう約束して、一旦電話を切った。