聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「好きです…先輩。離れたくないっ…」
「え!?」
矢嶋の顔が見れない。
どんな顔をしているのだろうか。
今更。というような顔だろうか。
悲しげに、彼女がいることを告げられるのだろうか。
「橋本ちゃん、離して…?」
優しくそう言われ、渋々矢嶋から体を離す。
矢嶋の顔が見れず、俯く菜々。
矢嶋は後ろを振り返り、菜々と向き合った。
「…ごめん。」
――ああ、やっぱり。フラれちゃった。
予想通りの結果だったが、やはり実際にフラれると悲しい。
また涙が溢れそうになった、その時。
「東京行くって言ったの、あれウソ。」
「…へ?」
まさかの言葉に、菜々は驚いた。
矢嶋は、いたずらっぽく、でも嬉しそうな表情で言葉を続ける。
「離れないよ。4月から、県内の国立大学に行く。だからいつでも会える。」
安心した拍子で腰が抜けそうになった。