聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!


「好きです…先輩。離れたくないっ…」


「え!?」


矢嶋の顔が見れない。


どんな顔をしているのだろうか。


今更。というような顔だろうか。


悲しげに、彼女がいることを告げられるのだろうか。


「橋本ちゃん、離して…?」


優しくそう言われ、渋々矢嶋から体を離す。


矢嶋の顔が見れず、俯く菜々。


矢嶋は後ろを振り返り、菜々と向き合った。


「…ごめん。」


――ああ、やっぱり。フラれちゃった。


予想通りの結果だったが、やはり実際にフラれると悲しい。


また涙が溢れそうになった、その時。


「東京行くって言ったの、あれウソ。」


「…へ?」


まさかの言葉に、菜々は驚いた。


矢嶋は、いたずらっぽく、でも嬉しそうな表情で言葉を続ける。


「離れないよ。4月から、県内の国立大学に行く。だからいつでも会える。」


安心した拍子で腰が抜けそうになった。

< 300 / 305 >

この作品をシェア

pagetop