聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「おっと。大丈夫?」
矢嶋が、優しく菜々を抱きしめるようにして支えた。
「ごめん、びっくりした?橋本ちゃんの反応をみたくて、ちょっと意地悪しちゃった。」
「もう…!!先輩、ひどい!私、本当に東京に行っちゃうと思って、悲しくて…」
「…悲しくて、思わず好きって言っちゃった?」
矢嶋が頬を赤らめながら、嬉しそうに言う。
反して、菜々はまだ少し怒りながら言った。
「先輩、彼女さんもいるんですよね?離れちゃうなら、いっそ言っちゃおうと思ったけど、県内の大学なら、彼女さんともまだ付き合うーー」
「何の話?俺、彼女とかいないけど?」
「うそ。私、見たんです。先輩が、クリスマス前にお店で黒髪ロングの綺麗な女の人とデートしてるとこ。」
「黒髪ロング…?あぁ、もしかして姉貴のこと?」
「あねき…?」
「俺、年上の姉ちゃん2人いるからさ。黒髪ロングと、茶髪のボブの人がいたでしょ?」
「いえ、黒髪の人しか見えなかったけど…」
「そうなんだ?その日は、姉貴2人と出かけてたよ。俺、クリスマス前に街中に出掛けたのって、姉貴達が彼氏にプレゼントするものを選びに行くのについてったくらいしかないから、間違いないよ。」
矢嶋の言葉を聞いて、ますます安心した菜々は、矢嶋の胸にそのまま顔を埋めた。