夜を照らす月影のように#8
ノワールside
僕は、泣きながら町を歩く。

オズワルドさんが、僕と前世からの幼なじみのメルキュールしか知らないはずの言語……日本語で僕を罵倒した。

僕の兄であるリオンたちは、誰も僕を助けてはくれなかった。

リオンたちは、日本語が分からないから仕方ないことだって分かってる。

……でも。

心のどこかで、リオンたちなら助けてくれるって思っていた自分がいた。

勝手に期待して、勝手に絶望して、勝手に落ち込んで。そんな自分が、嫌いだ。

やっと涙が落ち着いてきて、僕は深呼吸をしてから辺りを見渡す。

「……ここって……」

記憶を思い出して、傷ついたけど少し落ち着いてきて、少しは冷静になれたのか、僕はここがどこなのか理解した。

ここは……僕と前世からの幼なじみのメルキュール……いや、藤村零(ふじむられい)が前世で暮らしていた町だ。そして……多分、僕は今本の中にいる。ということは、前世で書いた小説の世界ということか……。

僕は、この町を舞台にした話を前世で書いたことがある。幼なじみである零でさえも知らない、僕だけが知る、僕が太宰修也(だざいしゅうや)だった頃に書いた実話を元にした物語。

「……」

ズキン、と胸が痛んだ気がして、僕は近くの塀にもたれかかると僕はその場で膝を抱えて座る。そして、顔を自分の膝に乗せた。

蘇るのは、前世での辛い記憶。
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