夜を照らす月影のように#8
思い出す度に、心が痛む。どんどんと気分が落ちていく。涙が、溢れる。辛いよ……誰か、助けて……。

僕が泣いていると、不意に誰かに抱き締められた気がして僕は顔を上げた。見覚えのある白髪が、視界に入る。

僕の義理の兄であるリオンだ。リオンが、僕のことを抱き締めている。

「……離れて」

僕は、その場から逃げたくて暴れた。途中、「お願いだから!!離れてよ!!」と自分でもびっくりするくらいの大きな声が出る。

リオンの力は強くて、なかなかリオンから抜け出せない。しばらく暴れてた僕だけど、リオンの「ごめん」という小さな声が聞こえてきて、僕は動きを止めた。

「…………メルから聞いたよ。異世界から転生して来たってこと。その秘密を話せたら、もっと楽に過ごせたよね……ごめんね。今まで、辛かったよな。俺は、ありのままのノワールを全部受け入れる。家族だから。ノワールのことを受け入れられなかったら、俺は兄として失格だ……」

僕から離れたリオンの黄色の瞳からは、綺麗な涙が零れている。今まで泣いたところを僕らに見せたことがなかったリオンが、泣いている。

リオンの近くにいた皆も、どこか悲しそうにしてるような気がした。

「……」
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