麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑦/危険色の進路決す!
危険色の針路/その3
夏美



それは…、昨日のミキさんの予見通り、極めて大胆な改革案だった

「私は今回、湘南の波沢丈子さんと会談してきて、彼女の率いる組織や他県の後続グループが、男の関与を受けずにレディースが結成できる土壌を広めたいという思いがこれほど熱いものかと、再認識しました。その為の先導役を、私が総長になった南玉に期待していたんですよ…」

まさに単純明快だった

ずばり、レディースときたわ…

漠然とはそんなところだろうということは承知していたが、こうしてストレートに告げられると鮮烈な印象を受けるよ


...


「…これは、本来の紅丸さんの赤塗り理念とは異なりますよね。私はこれまで紅丸さんに、さんざん訓読を受けました。女だけのバイク乗りのチームをどんどん増やすことは、自分が提唱する赤塗りの目的ではないと…。”そこ”一辺倒になってチームが乱立すれば、自然といくつかのグループにまとまって、やがては勢力争いに至る。気が付いた時には覇権主義の基盤が出来上がってると…」

荒子はゆっくりした口調で、どこか思いつめた表情をしていた

「…そうなったら、大人の権力闘争と同じで、人間っていうのは知らず知らずに弱者を虐げるようになるからと…。ですが、当時の私には紅丸さんのおっしゃる意味が、よく分かりませんでしたよ」

ここで訴えるような狂犬娘の表情は、妙に私の心に響いた…


...


「…私はただ単に、紅組がかっこよくバイクに乗っかってる姿を見て、自分もあんな風になりたいと思っただけだったんです。ですから、若い女が誰にも遠慮ぜずやりたいことができる風土をと言うなら、みんながそんなことを実現できる環境をどんどん造りあげればいいんだと…」

鷹美に目をやると、時折小さく頷き、神妙な顔で聞いていたわ

「…だから自分は、これからの時代、男に気兼ねなくじゃんじゃんチームを作っていける風潮を促進していきたいと唱えたんです」

これが言わば荒子イズムのルーツだった訳だ

そしてその針路は、彼女が中学生の頃から圧倒的な支持を得た…

こういった、紅子さんの基本理念と荒子のいわゆるイケイケ路線の比較対称って、今まで何度も耳にしてるのだけれど、一方の当事者である荒子から感情を込められて話されると、今まで見えなかった部分もあったのかなと感じたわ




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