絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「それまで我々は、多くの貴族や商人に助けを求めましたが、身分を明らかにしない私たちを不審に思い、応じてくれる人はいませんでした。そんな中、彼は当たり前のように馬車を降りてきて、我々が困っていることを知ると、その純白の儀礼服を泥まみれにして馬車をぬかるみから押し出し、助けてくださったのです」
そしてマリカは今度は申し訳なさそうに目を伏せる。
「本来であれば、お助けいただいた時に身分を明らかにするべきでした。ですが当時の私はそこまで頭が回らず……供の者たちも、同盟国とは言え、他国に帝国の皇女がいることを知られてはいけないと、秘密にしてその場をあとにしました。帝国に戻ってしばらくして、ようやくそのことを思い出した私は、助けてくださったあの方の行方を方々で探させたのですが、ずっとわからないままで……。このまま一生、恩知らずとして生きていくのかと悩んでおりました」
そしてマリカは今度は、フランチェスカにその目線を向けた。
「ですが、奇跡が起きたのです。私がたまたま手に入れた大好きな作家が書いた脚本に、その方のことが書かれていました。八年前、叙勲の儀に泥だらけで姿を現したという――マティアス・ド・シドニア閣下のことが……!」
それまで半ばぼんやりと夢うつつで話を聞いていたフランチェスカは、『大好きな作家が書いた脚本』と聞いて、我が耳を疑った。
(えっ……えっ……?)
今、皇女マリカがものすごいことを言わなかっただろうか。
(大好きな作家って……まさかBBのこと? 皇女殿下が私の読者ってこと!?)
本人に確かめたいが、さすがのフランチェスカも空気を読んだ。必死に言葉をのみ込みつつ、肩を抱かれたままマティアスの背中を抱きしめる。
「アルテリア貴族の皆様、ご理解いただけたでしょうか」
マリカはキラキラとした笑顔になり、驚いて声ひとつあげられない王国貴族を見回した。
「八年前のこの思い出がなければ、私は帝国を離れアルテリア王国に嫁いで来ようとは思わなかったでしょう。レオンハルト様とご縁を結ぶこともなかった。ですから私は王都に入る前にまずシドニア領に向かい、そして彼に勲章を授け一時的に帝国の騎士になっていただきたいと、お願いしたのです」
そしてマリカは今度は申し訳なさそうに目を伏せる。
「本来であれば、お助けいただいた時に身分を明らかにするべきでした。ですが当時の私はそこまで頭が回らず……供の者たちも、同盟国とは言え、他国に帝国の皇女がいることを知られてはいけないと、秘密にしてその場をあとにしました。帝国に戻ってしばらくして、ようやくそのことを思い出した私は、助けてくださったあの方の行方を方々で探させたのですが、ずっとわからないままで……。このまま一生、恩知らずとして生きていくのかと悩んでおりました」
そしてマリカは今度は、フランチェスカにその目線を向けた。
「ですが、奇跡が起きたのです。私がたまたま手に入れた大好きな作家が書いた脚本に、その方のことが書かれていました。八年前、叙勲の儀に泥だらけで姿を現したという――マティアス・ド・シドニア閣下のことが……!」
それまで半ばぼんやりと夢うつつで話を聞いていたフランチェスカは、『大好きな作家が書いた脚本』と聞いて、我が耳を疑った。
(えっ……えっ……?)
今、皇女マリカがものすごいことを言わなかっただろうか。
(大好きな作家って……まさかBBのこと? 皇女殿下が私の読者ってこと!?)
本人に確かめたいが、さすがのフランチェスカも空気を読んだ。必死に言葉をのみ込みつつ、肩を抱かれたままマティアスの背中を抱きしめる。
「アルテリア貴族の皆様、ご理解いただけたでしょうか」
マリカはキラキラとした笑顔になり、驚いて声ひとつあげられない王国貴族を見回した。
「八年前のこの思い出がなければ、私は帝国を離れアルテリア王国に嫁いで来ようとは思わなかったでしょう。レオンハルト様とご縁を結ぶこともなかった。ですから私は王都に入る前にまずシドニア領に向かい、そして彼に勲章を授け一時的に帝国の騎士になっていただきたいと、お願いしたのです」