絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「いや……可愛すぎるだろ……」

 そして同時に、激しく気分が落ち込んだ。

 素直に受け入れるしかない。
 ああそうだ。フランチェスカは愛らしい。とても魅力的だ。
 頑張り屋で行動派、とにかくなんでも自分でやってみないと納得しない強情な一面はあるが、他人を慮る配慮もできる、よくできた女性だと思う。
 貴族の中でも特に身分が高い家系に生まれているはずなのに、いかにも貴族らしい傲慢な態度がかけらもない。
 それは同じく平民のルイスやダニエルからも伝え聞いていた。
 部下たちはすっかりフランチェスカにメロメロになっていて『マティアス様は本当にいい奥方様を貰ったよなぁ!』と喜んでいるらしい。

 おそらく彼女は十八年間箱入り娘として生きてきて、貴族とはこうあるべきだという振舞いを叩きこまれずに育ってきたのだ。おっとりしつつも純粋で、どこかパワーにあふれた性格は、彼女自身の気質なのかもしれない。
『白い結婚』の申し出を後悔はしていないが、フランチェスカの素朴で優しい振舞いは、確実にマティアスの心を揺さぶっていた。

(――危険だな)

 これ以上の好意を持ってしまえば、いずれ訪れるに違いない別れが辛くなる。
 マティアスは胸元に手をやり、そうっと手のひらで上着の胸ポケットを抑える。
 その中にはおまもりの『ポポルファミリー』が入っていて、ここにいるよ、と確かに伝えてくれるようだった。

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