推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太は慌てる穂香を見ても、冷静なまま呟く。


航太「それってそんなに大事なの?」


穂香「うん……どうしよう……」


穂香は目をウルウルさせて、航太の目を見つめると、航太が言った。


航太「もう1回目を閉じて……?」


穂香「え……?私が弱ってて可愛く見えたから、我慢できなかった。
ってチューするとか反則だよっ!?よく少女漫画でそういうのあるんだから。絶対にダメ……んぅ……」


必死に早口で話している最中に、両手で穂香の頬をつねって横に引っ張る。


航太「何回同じ事を言うんだよ?フフっ……面白い顔……黙って目を閉じればいいから」


穂香「はい……」


目を閉じると、航太がガサガサと穂香のリュックを触ってるのを感じる。


航太が穂香のリュックから手を離して言う。


航太「目を開けていいよ?」


穂香が目を開けて、自分のリュックを見るとぬいぐるみが綺麗になっていた。


穂香「えっ?あっ?な……なんで?綺麗になってる?あれ……?えっ?マジック?」


驚いて何度もぬいぐるみを確認している穂香を見て航太が笑う。


航太「綺麗になって良かったな?さぁ電車来たから帰ろ?」


駅のホームに電車が入ってくる。

電車に乗り込む穂香は目をパチパチとさせて、航太を見たりK様のぬいぐるみを見たり。


穂香「なんで?なんで?」


航太「さぁ?駅で泣かれなくて良かった……」


穂香「航太くんもK様のファンだったりする?」


航太「さぁ?知らない……」


航太のリュックで隠れているお尻のポケットに、ドロドロになったK様のぬいぐるみが入っている。

航太が同じぬいぐるみを交換してくれたなんて、穂香は知らないまま。



(第5章 春の遠足~後編~終了)


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