推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○空港のターミナルビル。玄関。


暗くなり始めた夜7時頃。
バイクが空港の前に着いた。
空港も飛行機が離着陸する滑走路も、ライトが照らされて幻想的に見える。


穂香「リュウさん見てみて?凄く綺麗……」


リュウは穂香を入り口で下ろして、ウインクして言った。


リュウ「俺じゃなくてKと感動しなよっ!?ほら急いでっ!!あと10分くらいで出発しちゃうよっ!!」


穂香「あっ!!はいっ」


リュウは駐輪場にバイクを置かないといけないので、一緒についていくことはできずに、穂香を先に行かせた。


(空港のターミナルビル。玄関終了)



○空港のターミナルビル。搭乗口。


空港のインフォメーションで搭乗口を聞いて、慌てて全力で走る穂香。


穂香「残り10分……きっともう一度会えるよね……?」


搭乗口は見送る人や、違う飛行機に乗る人も待機していたりするので、簡単に人が見つかるものでもない。
航太が見つからないまま、時間だけが過ぎていく。


穂香「漫画なら……ドラマなら……こういうゲートの前で会えるのに……」


ゲートの前を全力で走りながら、次から次へと人の顔を覗き込んでは、航太と違って落胆した表情を見せる。
それでも一人でも多くの顔を確認しようと、穂香は走り回った。


時間はどんどん過ぎていく中、時間にさえ間に合えば会えると思っていた穂香の表情は雲っていく。


穂香「もう乗っちゃったのかな……航太くん……もう一度会いたいよ……」


半泣きで涙を浮かべていて、もうあまり前も見えていない状況の中、男の叫び声が聞こえた。


男「穂香ちゃ~んっ!!!」


穂香が目を擦って幸せそうな満面の笑みを浮かべて見てみた。




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