甘い罠、秘密にキス

06.余韻にキス



重い瞼を押し上げ、ぼんやりとした視界の中、窓から覗く光を見て朝になったのだと気付いた。

…あれ、もしかして遅刻?

サーッと血の気が引いて、慌てて起き上がろうとしたけれど体が動かない。そこでやっと、後ろから桜佑に抱き締められていることに気付く。


「桜佑起きて!遅刻!」

「今日は土曜日」

「………あれ」

「寒いから動くなよ」


私が逃げないよう更に力を込めた桜祐は、後ろからつむじ辺りにキスをする。くすぐったくて思わず身を捩ると、桜佑は「また勃ちそう」と恥ずかしげもなく呟いた。

よく見たら、私達はあのまま眠ってしまったのかお互い下着だけしか身につけていない。桜佑の体温がダイレクトに伝わってきて、何とも言えない気持ちになる。

セックスの最中にくっつくのはまた違う。冷静な時にこんな体勢になると、まるで本物のカップルみたいでめちゃくちゃ恥ずかしい。


「…桜佑、ちょっと離れてよ。くっつき過ぎ」

「婚約者なんだし、別によくね」

「……」


婚約者として認めたなんて一言も言っていないのに、昨日身体を許してしまった手前、何も言い返せない。

思わず口を噤むと、桜佑は満足気に笑ってから「もう少しこのままがいい」と子供のように零した。


昨日は結局、どれだけ身体を重ねたんだっけ。もう1回って言ってから、2回はしたような、していないような…。

記憶が曖昧だけど、とにかく激しかったのは覚えてる。途中から全く力が入らなくなって、体力に自信があるなんて言わなければよかったと後悔した。だって、桜佑の体力に勝てるわけがないのだから。

男の人には賢者タイムが存在するって聞いてたけど、どうやら桜佑にそんな時間はないらしい。

< 102 / 309 >

この作品をシェア

pagetop