甘い罠、秘密にキス
「そんなことより、少し寝た方がいいよ」
「一緒に寝る?」
「…寝ないけど、桜佑が眠りにつくまでそばにいてあげる」
添い寝は?と問いかけてくる桜佑に首を横に振る。
すると桜佑はめちゃくちゃ不服そうに私を睨みながらも、のそりと立ち上がるとそのまま大人しくベッドに入った。
「このまま俺が眠らなかったら、伊織は朝まで一緒にいてくれるってことだよな…起きてよっかな」
「バカなこと言ってないで早く寝なよ」
「結構本気なのに…」
桜佑はそう呟きながらも既にうとうとしていて、今にも意識を手放しそうだ。
「もう泊まっていけよ」
「ううん、明日仕事だから帰るよ」
「だったら1時間後に起こして。そしたら俺が家まで送る」
「冗談やめて。無茶したら悪化するよ」
「また酔っ払いに絡まれたらどうすんだよ。寝てる間に帰られたら、何かあったとき助けられないだろ」
あ、一昨日の夜のこと気にかけてくれてるんだ。こんな時でさえ私の心配をするなんて、どれだけ過保護なの。今は自分のことだけ考えてくれればいいのに。
──でも、私のこと大事に思ってくれているのが伝わってきて、素直に嬉しい。
気を抜いたらニヤけてしまいそうだ。
「外はまだ暗くないし大丈夫。桜佑が早く寝てくれたら、その分早く帰れるし」
「……」
「お願いだから今日はゆっくり休んで。早く治してもらわなきゃ困るから」
「…それは、早く俺とイチャつきたいってこと?」
「仕事を休まれたら困るってこと」
ぴしゃりと言い切ると、桜佑は「なんだその理由」と唇を尖らせた。
不貞腐れている桜佑に布団を掛けてあげると、熱のせいで少し潤んでいる瞳と視線が重なった。