甘い罠、秘密にキス
でもそれって、反対に言えば井上さんは本当にただ助けを求めただけなのでは…?下心とかなく純粋に困っていただけなのだとしたら…疑ってしまったことに、罪悪感を抱いてしまう。
『なぁ伊織』
「……え、あ、なに?」
桜佑の声で我に返り、首をぶんぶんと横に振る。
一旦井上さんのことは忘れよう。
気持ちを落ち着かせるため、一度小さく深呼吸をした。テーブルの上に置いていたミネラルウォーターをひとくち口に含んで、桜佑の次の言葉を待つ。
『もしかして妬いてんの?』
「ブッ!」
は?!この男、急に何言い出すの?!
突拍子もない発言するから、思わず水を吹き出してしまったじゃないか。
慌ててティッシュを引き抜いて口元を拭く。テンパる私を余所に、桜佑は『今のなんの音?』と呑気に呟く。
「え、ちょ、は?!な、なな何言ってんの!ビックリするんだけど」
『いや、急に変なこと聞いてくるから、もしかして俺が他の女社員と密会してないか気にしてんのかと思って』
「んなわけないでしょ?!何となく疑問に思ったから聞いただけで…」
『なんだ、面白くねーな。まぁ残念ながら、疑われるようなことは何もねえけど』
ドッドッと心臓が激しく波打つ。
まるで核心を突かれたような感覚に、頭が真っ白になって動揺を隠しきれない。
この私が嫉妬?いやいや、今までヤキモチなんてやいたことないし。
藤さんと付き合ってる時だって、彼が他の女性社員と話しているところを見ても何とも思わなかった。
それこそ仕事だし、いちいち気にすることではないと思っていたから。
だから、いくら桜佑が婚約者だって言っても、始まり方は異例だし、だからそんな…。
……でも、だったらこのモヤモヤはなに?
『つか、嘘でも妬いてるって言ってくれていいんだけど?そしたら今すぐにでもお前のとこ行って、朝まで…』
「い、言うわけないでしょ?!」
顔アッツ!全身に変な汗かいてる!早くお風呂に入りたい!