甘い罠、秘密にキス
「なんか催促したみたいになってごめん」
急に照れくさくなって、はぐらかすように俯き気味に呟いた。けれどすかさず伸びてきた手が顎を掬うから、再び視線が絡む。
ヒールを履いているせいか、いつもより目線が近い。他の社員に見られたらどうしようというスリルもあって、バカみたいに心臓がドキドキしている。
「そんなんじゃねえよ。ずっと言いたくてうずうずしてた」
「…ほんと?」
「ほんと。でもなかなか二人きりにはなれないし、それどころか話し掛ける暇もなかった。それなのに、お前はどんどん周りの視線奪っていきやがって」
「…やっぱり怒ってる?」
「怒ってる。俺が一番に見て、一番に綺麗だって伝えたかったのに…なんですぐ見せに来ねえかな。てか、こんな格好で来ることすら知らなかったんだけど」
「それは、急遽川瀬さんの提案でこうなったから…」
ムッと眉を寄せた桜佑は、キスするんじゃないかってくらい顔を近付けてくる。至近距離でまじまじとメイクを見られ、恥ずかしさのあまり目を逸らしたくなる。
だけど顎に添えられている手が、それを許してくれない。その手を振り払いたくても、いつもより男前な桜佑に抗えない自分がいる。
「お前が他の男に言い寄られてんの、ずっと遠くから見てた。でも駆けつけることも出来ないし、まじで気が狂いそうだったんだけど」
「別に言い寄られてなんか…」
「お前のこと知らないクライアントが“あの綺麗な人は誰ですか”って聞いてくんのが何回かあったし、皆がお前のこと見てるから、全員の眼球つぶしてやろうかと思ったわ」
「な、なんて物騒な…」
「もうこのまま誰の視界にも入れずに連れて帰りたいんだけど」
顔が熱い。桜佑の目に私はどう映ってるのかなって、ずっと気にしていたけど。
なんか、思ってたのと全然違う。