甘い罠、秘密にキス

「…桜佑も酔ったりするんですね」

「伊織ちゃんは日向が酔ってるとこ見たことないんだ?まぁそうか、あいつ基本強いもんな。てかあの時も、俺が無理やり酔わせたようなもんだし」

「そうなんですか?」

「あいつ元々バーに来るようなタイプの人間じゃないから、ツレに無理やり連れてこられたのが始まりらしくて。だからあいつ、来ても1杯くらいしか飲まないの。でも胸の内を吐き出すには、やっぱ酒しかないじゃん?寂しそうな顔の理由も知りたかったし、俺の奢りでしこたま飲ませたわけよ」


そんな過去があったんだ。桜佑ってやっぱりお酒強いんだな。
まぁもし弱かったら、私はいま桜佑と婚約なんてしていないのだけど。

それにしても皇さんって優しすぎない?少し謎は多いけど、彼を纏う空気は柔らかいし、この店で知り合っただけの桜佑のこと、凄く気にかけてる。

私達が離れている間、桜佑も色々な人と出会って、たくさん支えられていたのかな。家庭環境が複雑な桜佑が、真っ直ぐな大人になれたのは、こうした良い出会いがあったからなんだね。


「まぁそういうことが何回かあったから、俺は日向くんの秘密を握っちゃってる感じ?伊織ちゃん、俺がいまここでバラしたこと日向には内緒だからね」


はははーとゆるい笑い声を放つ皇さんに、釣られて口元が緩んだ私は「分かりました」と首を縦に振った。


「でもそっかー、付き合ってんのかー。日向、ほんと良かったなぁ」


あいつ苦労人だから、なんかこっちまで嬉しくなってきた。そう続けた皇さんは「感慨深いなぁ」と独り言のように呟く。

桜佑にこんな素敵な友人がいて、私も嬉しい。と、私からも伝えようとした時、ふと背後に気配を感じた。


「俺が何だって?」


……待って、この声は。


「あれー?もしかしてその声は日向くんかなー?」

「皇くん、いま何の話をしていたのかな?」

「もー、登場が早すぎるよ日向くんー」


桜佑、いつからそこにいたの…?

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