甘い罠、秘密にキス

「…なにこれ?」


テーブルの上に置かれたのは、ジュエリーブランドの小さな箱。ハイブランドのものではないけれど、オシャレに詳しくない私でもこのお店の名前は知っている。


「お土産」

「え、また?」


前回もボールペンを貰ったというのに、この男、私に貢ぎ過ぎではなかろうか。ご当地のお菓子とかならまだしも、お土産にしては値段設定がおかしい気が…。


「…開けてもいい?」

「どうぞ」


おずおずと箱を開けてみると、入っていたのはゴールドのピアスだった。
小さめのダイヤがあしらわれた、小ぶりのピアス。シンプルなデザインで、これなら職場でもつけられそう。

だけど…


「か、わいい…けど、本当に貰っていいの?誕生日はまだまだ先だよ…?」

「だからお土産だって言ってんだろ」

「お土産にしては豪華過ぎるでしょ。なんだか申し訳ない気が…」

「だからって突き返されても困るんだけど」


確かにそうだ。ここで受け取らないのも逆に申し訳ない。

躊躇しながらも「では遠慮なく…ありがとうね」と受け取れば、桜佑は満足げに微笑んだ。


「せっかくだから、つけてみようかな」


バッグから小さな鏡を取り出して、ピアスをひとつ手に取る。

ピアスの穴を開けたのは大学の時。周りの友達のように、私も可愛いピアスをつけてみたくて開けてみた。まぁ結局勇気がなくて、女性らしい大ぶりのものは付けたことがないのだけれど。


「塞がってなければいいけど…」


ピアスの針を、恐る恐る穴に通す。久しくピアスなんてしてなかったから、穴が塞がっていないか不安だったけど、多少苦戦しつつも無事に針が通り、思わず「やった、入った」と声が出た。


小ぶりでシンプルだけど、女性らしいデザイン。いつもの私ならきっと躊躇したけど、この服装のお陰か迷うことなくつけることが出来た。

鏡に映る自分を見て、違和感がないことに嬉しくなる。思わず口元を緩める私に、桜佑は「似合ってんじゃん」と口角を上げた。


「こないだのデートで、お前さりげなくアクセサリー見てたろ」


デート?もしかして、ラーメンを食べたあとバスケのゲームで遊んだ日のことだろうか。確かにあの日、ゲームをした後ショッピングモールをぶらぶらしながら、密かにピアスやネックレスを見ていた。


「そうだけど…気付いてたんだ。それでこれを…?」

「まぁそれもあるけど、純粋にお前にあげたかったから。これなら職場でもつけられそうだし、これをつけてるお前を見たら、俺もテンション上がるし」


だからこれは、俺のためでもある。悪戯っぽく笑いながらそう続けた桜佑を見て、大きく心臓が跳ねた。

どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい。


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