甘い罠、秘密にキス
早くひとつになりたくて、桜佑の背中に手を回し、ぎゅっと強く抱き締めた。甘えたい時は何も言わずに抱きついてくれたらいいって、桜佑が教えてくれたから。
桜佑はそれを察したのか、私の頬にキスを落としながらベルトのバックルに手をかけた。
「──伊織、挿入れるぞ」
私はこの、ひとつになる瞬間が堪らなく好き。優しい声音で私の身体を気遣ってくれるところも、きゅんとしてしまう。
それどころか、桜佑のことが好きだと気付いてしまった今、彼の動きや仕草、ひとつひとつが愛しく思える。
「──伊織、」
繋がっている最中、桜佑は私の名前を何度も呼んだ。その度に私も桜佑の名前を呼ぼうとしたけれど、あまりの激しさに声にならない声が出て、上手く言葉が紡げなかった。
名前を呼ぶどころか、ただ喘ぐことしか出来ない私に、桜佑は何度も「好き」と伝えてくる。
それに対し「私も」と返したいのに、それをさせてくれないのはやっぱり桜佑だった。
動きが止まったと思えば性急にキスを求められ、喋る隙を与えてくれなくて。
結局私は最後まで“好き”のたった二文字を伝える事が出来なかった。
事が終わったあと、布団の中で少し会話をしたけれど、改めて言うのは照れくさくて案の定言えず。
焦らずゆっくり伝えればいいか、と判断した私は、シャワーを浴びたあと、桜佑の腕の中で意識を手放した。