甘い罠、秘密にキス
10.独占欲にキス
桜佑のことが好きだと気付いてしまった。
その瞬間から、私の頭の中は桜佑でいっぱいになった。
この歳になって初めて恋をしたせいか、正直戸惑うことばかり。
とりあえず、好きって伝えることがこんなにも難しいだなんて知らなかった。
桜佑の気持ちは分かっているのだから、そんなに怯えることもないはずのに。
その言葉をずっと私にくれていた桜佑って、一体どんなメンタルをしているのだろう。
離れたそばから会いたい。声が聞きたい。だけど、変に意識してしまうせいで目を合わすのが恥ずかしい。
そのせいか、さっきから桜佑の顔が直視出来ない。近付いてきたらトイレや外勤に逃げてしまう。
社内恋愛って、こんなにもレベル高いの?これでよく藤さんと付き合えてたな。
でも、桜佑からもらったピアスに触れると、不思議と心が落ち着く。
私がこのピアスをつけていたら、桜佑もテンション上がるって言ってたし、私にとってお守りみたいな存在だ。
なくさないように大事にしなきゃ。
──朝からそんなことばかり考えているから、全く気が付かなかった。
「パーティーの日の佐倉さん、可愛かったな」
「今日はいつもの感じだ」
「でもなぜかいつもと違って見える」
「なんか最近、急激に綺麗になった気が」
「完璧に女にしか見えない」
「俺、佐倉さん結構タイプかも」
「俺も俺も。クールビューティーって感じであざとさがなくていいよな」
まさか周りの人が、コソコソとそんな話をしているなんて。