甘い罠、秘密にキス
「み、みんな知ってるの…?」
「はい、結構噂になってますよ」
噂にまでなってるの?!
うそだ…そんなこと全く気が付かなかったんだけど…。
これも恋をして浮かれすぎていた証拠だろうか。自分のことでいっぱいいっぱいで、周りを見る余裕がなかったんだ。
「そんなに分かりやすいんだ…」
「まぁ(みんなの佐倉さんを見る)目が全然違いますからね。ハートになってる」
「は、ハート…!」
確かにカッコイイなって思いながら見てましたけど、周りが見て分かるって相当だ。
でもそれって、相手が桜佑ってこともバレてるって意味だよね。それってかなりマズいのでは。
婚約がバレていないのならギリギリセーフな気もするけど、もしその噂が桜佑の耳に入っていたら、なんか嫌だ。だって、まだ自分の気持ちを伝えてられていないもの。
これってもしや、早急に告白した方がいいのでは…?
「まぁ頑張ってください。ランチ楽しみにしてます」
「…ありがとう…」
ただでさえ常に心臓がドキドキしているのに、気持ちを伝えなきゃと思った瞬間から、緊張がピークに達している。
こうなったら一刻も早く吐き出したい。桜佑は今晩暇じゃないのだろうか。
残業はするのだろうけど、確か会食とかはなかったはずだ。よし、こうなったら…
「──日向リーダー」
早速行動に移してやるんだから。
こういう時こそ男前な行動よ。今晩お暇ですかって、絶対に誘ってみせるぞ。
「…どうした、その顔」
「顔のことは気にしないでください」
外出先から帰ってきた桜佑をたまたまエントランスで見付けた私は、慌てて呼び止め彼の前に仁王立ちする。
タイミングがいい事に、今は周りに人はいない。だけど、いつ誰が現れてもいいように、眉間に皺を寄せてハートマークをかき消す。
そのせいか、桜佑は怪訝な顔で見下ろしてくる。