甘い罠、秘密にキス
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「いやーまさか佐倉さんがチャーシューもりもりこってり豚骨ラーメンを食べるとは思いませんでした」
「そう?私あそこのラーメン好きなんだよね」
「めちゃくちゃ豪快にすすってましたもんね。美味しそうに食べるから、見てて楽しかったです」
「やめてよ恥ずかしい…でもご馳走様でした。ありがとうね」
「こちらこそ付き添いありがとうございました」
無事にA社の訪問を終え、大沢くんと行ったランチはあのラーメン屋さんだった。桜佑と初デートで行った、あのお店だ。
あの日も確か同じメニューを選んだっけ。あれからそんなに月日は流れていないはずなのに、とても懐かしく思えてしまう。
ちなみに、山根くんがトラブった日から数日が経ったけど、未だに桜佑に気持ちを伝えていない。というのも、彼はトラブルの対応で自分の仕事が手につかず、ここ数日はそのしわ寄せで忙しそうにしていたからだ。
「それにしても大沢くん、会話が上手だね。もう私がついて行かなくても大丈夫そうだよ」
「いやいや、佐倉さんが隣にいてくれたから落ち着いて出来たんすよ。内心ビビってました」
「そうは見えなかったけだなぁ。まぁ確かに、A社は大口クライアントだし、社長は優しい人だけど見た目が迫力あるから緊張するよね」
「そうなんすよねー。でも佐倉さんとランチに行けたし、楽しい時間を過ごせました」
調子のいい彼は、へらりと笑いながら女を口説くような台詞を並べる。
そんな彼に呆れつつも、大沢くんの成長を感じられたし、私もいい時間を過ごせたと思う。
「あ、大沢くん。私お手洗いに行ってから戻るから、先に行ってて」
会社に戻り、トイレの前を通り過ぎる直前に大沢くんに声を掛けると、彼は「了解でーす」と返事をしながらオフィスに向かって歩き出した。
──そして私は、この別行動を、後に後悔することになる。