甘い罠、秘密にキス
ああ、やっぱり知ってたんだ。てことは、気持ちを伝える手間も省けたってことかな。だとしたら大変ありがたい話……なわけないのよ。
私が桜佑を好きなのは本当の話だけど、本人に気持ちを伝える前に噂が流れてしまうのはいい気がしない。もたもたしている私が悪いのだけど、かなり最悪だ。
「日向リーダーも可愛いと思いません?佐倉さんのこと」
話はまだまだ終わらない。むしろ大沢くんはどんどん攻めていく。
桜佑はこの質問に何て答えるのだろう。今まで桜佑には何度も「可愛い」って言われたけど、さすがにこの人達の前では上手く誤魔化すかな。いや、この男なら堂々と「可愛いと思うよ」とか言っちゃったりして。そうなったら、私また大沢くんにからかわれ…
「んー、どうだろうな」
「あ、日向リーダーはタイプじゃない感じっすか?」
「あいつは可愛いっていうより、どちらかというとかっこいい方だろ」
──あれ、何でだろうな。別に期待してた訳じゃないのに、チクッと胸が痛む。
ここで桜佑が私のことを褒めたら、私達の関係を怪しまれる可能性がある。大沢くんのことだからすぐに言いふらしそうだし。そう考えたら、この答えが正解なんだろうけど。
桜佑の口から“かっこいい”という言葉が出てきたからか、ここにきてオスゴリラ時代を思い出してしまう自分がいる。
「でもラーメン全力ですすってるとことか、めちゃくちゃ可愛かったですよ」
「大沢の可愛いの基準、おかしくないか?てかそんなとこ見るなよ」
「そりゃ見ちゃうでしょ。そこが佐倉さんの魅力でもあるし」
「俺には分からないな」
これは大沢くん達に勘繰られないようにするための言葉だ。そう信じたいのに、桜佑の言葉がズキズキと胸に突き刺さる。
だって、私の気持ちを知っててそういうこと言ってるってことだもん。なんかちょっと、ショックだな。