甘い罠、秘密にキス

12.秘密にキス





「──おり…伊織、起きろ」


心地よい温もりに包まれながら、ゆさゆさと身体を揺すられ、重い瞼をゆっくりと押し上げる。


「起きたか?」

「…まだ眠いです」

「夜更かしするからだろ」

「誰のせいだと思ってんの…?」


昨夜、私は「もう出来ない」ってハッキリ伝えた。寝る直前まで、今日は無理って言い続けた。

それなのに、布団に入ってすぐに私を抱き寄せた桜佑は、キス魔にでもなったのかと思うほど、私の唇や額、頬にたくさんキスを落とし、それはやがて耳や首筋に移動した。

すかさず文句を言おうとすれば、すぐに唇を塞がれ、その深いキスに思わず力が抜けると、今度は桜佑の手が悪さを始め、そこからは……。

まぁ、気付いたら日を跨いでましたよね。


「喉カラカラ…身体もめちゃくちゃダルい…」

「いっぱい鳴いてたもんな」

「…バカ」


悪戯っぽく笑う桜佑を、じろりと睨む。

なんでこの男はこんなに元気なの。私より運動量は遥かに多いと思うんだけど。

私は今日、足に力が入るのだろうか。こんなボロボロな身体で実家に…………って、そういえば。


「桜佑、私の親には…」

「さっき連絡した。今すぐ来いだって」

「ほんと仕事が早いね」

「俺はお前のことになると必死だから」


歯の浮くような台詞を吐いた桜佑は、私の首の下に腕を通し、腕枕の状態で私を抱き寄せる。


「やっぱもう少しこうしてたいな」

「…もう実家行くのやめて、ずっとこうしていようよ」

「それは却下。でも、あと少しだけ」


思いが通じ合ってからの桜佑は、前以上に甘い気がする。何度も落とされるキスは溶けそうなほど気持ちよくて、ずっとこうしていたいと思ってしまう。


「桜佑、好き」

「俺も」


このまま時が止まればいいのに。

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