甘い罠、秘密にキス
「じゃあ俺も、お前にプレゼント渡そうかな」
「え、また?」
ボールペンにピアス。今まで散々桜佑からプレゼントを貰ってきた。だからこれ以上貢いでくれなくてもいいのに。
心の中でそう訴えている間に、桜佑は部屋の一角にある棚から何かを取り出し、それを私の目の前に置いた。
「……え、これって…」
「手、貸して」
目の前に置かれた小さな箱を視界に入れた瞬間思わず固まってしまった。
そんな私を見て、優しく目を細めながら「左手な」と付け加える桜佑。
言われるままおずおずと左手を差し出すと、箱の中からキラリと輝くそれを取り出した桜佑は、ゆっくりと私の薬指にはめた。
「今度はピッタリだな」
これに見覚えがあるのは、数ヶ月前にこの部屋で一度見たことがあるから。
あの時は確か、朝目覚めたらいつの間にか同じ場所にはめられていて、ただその時は、少しサイズが大きくて…。
「婚約…指輪…?」
思わず零れた落ちた声と同時に、一筋の涙が頬を伝った。
この指輪の存在をすっかり忘れていた私は驚きを隠せないのと同時に、本当にサイズを直してくれていたことが嬉しくて、不意打ちの素敵なプレゼントに胸がいっぱいになった。
「伊織」
名前を呼ばれ、指輪に向けていた視線を桜佑に移す。その熱を孕んだ瞳に、思わず息を呑んだ。
「──結婚しよ」