侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
 もう王立公園には行かないようにしよう。

 翌日、目覚めたときにそう決意した。

 しかし、体はジョギングすることに慣れきってしまっている。頭と体は、ほんの少しでも走ることを欲している。

 王立公園には行かず、街を散策するのはどうかしら。

 寝台からおり、昨日ノーマンに無理矢理渡された紙片を取りに机に行った。

 その住所を地図で調べ、その辺りとその辺りから王立公園までのルートを避ければ、ノーマンにバッタリ出会うという偶然を避けられるかもしれない。

 われながら浅知恵だと思う。だけど、歩くだけでもいい。なにかしら体を動かしたい。とはいえ、この辺りをウロウロすれば、噂好きの貴族たちにどのような噂を流されるかわからない。

 それこそ、侯爵に恥をかかせてしまう。

 メイドのケイシーがやって来ると、さっそく地図を貸してもらうようお願いした。

 メモと地図を照らし合わせ、散歩するコースを決めた。

 ほんとうに街中だから、走ることは出来ない。だけど、そこそこの距離は歩けるかもしれない。

 朝食後、動きやすいあっさりしたスカートとシャツに着替え、さっそく散歩に出かけることにした。

 裏庭の犬舎にいるアールを連れに行き、エントランスの前までやって来た。

 すると、今朝もまた侯爵がどこかのレディと約束があるのか、ダウリング侯爵家の馬車が準備万端で待っている。
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