侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「申し訳ありません。今後、気をつけます。ですが、そういう関係ではありません。トレーナーの方にマッサージをしてもらっていたのです。最近、アールと走ることが楽しくって、ついつい足や腰に負担をかけてしまっています。肉離れや筋肉痛などにならないよう、体を揉んでもらっているのです」
「夫でもない男に体を触らせていることにかわりはない。それがはしたないというのだ。それに、『走ることが楽しい』? 女のくせに、慣れぬ運動などしてどうするというのだ?」

 ショックだった。それこそ、嫁いですぐに「おたがいに干渉せず、好きなようにすごすことにしよう」、と宣言されたときよりずっとずっとショックを受けた。

 ショックは、あっという間に怒りにかわった。
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