侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

衝突

「そんな恰好でどこへ行く?」
「アールとお散歩です」
「ああ、なるほど」

 侯爵の強面の眉間に縦皺が刻まれた。

「王立公園で男と会うのか?」

 な、なんですって?

 どうしてそういう解釈になるの?

「ど、どういう意味でしょうか?」

 喋りかけてきたと思いきや、その内容が尋常ではなかったから動揺してしまった。

「そのままの意味だが? 真昼間からどこぞのいい男と親密にしているらしいではないか? 見かけた者がいて、噂している。たしかに好きにしていいとは言ったが、まがりなりにもダウリング侯爵夫人だし、レディとしての嗜みというものがある。昼日中に、男と目を覆いたくなるような過度なスキンシップをとるのは止めた方がいい」

 ノーマンとのことね。ジョギングをしたりマッサージをしてもらっているところをだれかに見られ、侯爵の耳に入ったわけね。

 後ろ暗いことなど一つもしていない。だけど、たしかに軽率な行動ではある。

 第三者から見れば、とくにマッサージは「過度なスキンシップ」に見えてしまう。
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