侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「そうだわ。王立公園に行きましょう。図書館や美術館はまだやっているでしょうし、そこがダメでも雨宿り出来るところはあるはずだから」

 そう思いたつと、少しでもはやく雨宿りがしたい。

 アールのリードを握りしめ直し、小雨の中走りだした。

 王立公園へ向かって走っている間でも、雨脚は強くなる一方である。

 眼前に王立公園が見えてきた。

 入り口付近には、さすがに人の気配はない。

 馬車道を渡ろうとして、少し先に立派な馬車が停まっていることに気がついた。

 その馬車に見覚えがあるどころか、公式の場へ向かう際に何度か乗ったことがある。

 ダウリング侯爵家の馬車だわ。

 その瞬間、侯爵が考え直してわたしを捜しに来てくれたのだと直感した。

 どうしよう……。

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