侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「将軍、おめでとうございます。奥方を迎えられたとか。だったら、ルプスのような強面の成犬よりモフモフの仔犬の方がよろしいのでは?」
「そうだな。だが、おれのかわりに妻を守ってもらうつもりなんだ。おれのような年上で粗暴で気の利かないおっさんに側にいられたのでは、妻もかわいそうだ。それならば、まだ犬の方がマシだろう。それがまた、妻が小さくて可愛らしくてな」
「これはこれは、ごちそうさまです。まさか将軍がこんなになってしまうとは。デスクワークに移るというのも、その奥方にメロメロのせいなのですな」
「ああ」

 頭上で交わされる会話に驚きを禁じ得ない。

 本人を目の前にしてそんなこと言う?

 というか、わたしって認識されていない?

 すぐそこに水溜りがある。近づいてみた。首からリードがつながっている。

 もしかして、わたしって……。
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