侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

孤独な日々

 そんなある日、侯爵が一頭の大型犬を連れて帰って来た。

 なんでも、狼の血をひいている元軍用犬らしい。銀色の毛並みが美しく、強くて利口そう。

 一目見て気に入ってしまった。

 だけど、王宮で犬に一度も接したことのないわたしは、その犬とお付き合い出来るか自信がない。

 しかし、その心配は杞憂に終わった。

 その犬は、やはり利口だった。自分からわたしにフレンドリーに接してくれたからである。

 犬の名は「アージェント・ルプス」。銀色の狼という意味である。

 名前が長いので、アージェントのアーとルプスのルをとってアールと呼ぶことにした。

 わたしだけの呼び方。ちょっとだけワクワクする。

 アールとわたしは、日中一緒にすごすことが多くなった。

 自分の寝室の居心地がよすぎてひきこもりがちだったけれど、彼のお蔭で日中は庭やテラスですごすことが多くなった。
< 8 / 68 >

この作品をシェア

pagetop