フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
あたかもご主人様にマテを言いつけられたゴールデン・レトリバーの如く上目遣いで、じっとこちらの様子を窺っている奏に、今一度念押しする。
「本当に大丈夫なんですね?」
「ああ、問題ない」
自信たっぷりに答えた奏は、数分前に駄々っ子のような言動を繰り出してきたとは思えぬほど、男らしく堂々としている。
奏の変わり身の早さに驚くとともに、そうさせているのが自分だと思うと、この上なく嬉しいと思ってしまう。
――もっともっと自分の知らない一面を見せてほしい。
そんな想いに突き動かされながらも、覚悟のない穂乃香は想いを秘めたまま奏に身を委ねることしかできない。
「だったら、嫌なこと全部忘れさせてください」
「ああ、俺が何もかも忘れさせてやる。だから安心しろ」
それなのに奏は嫌な顔一つ見せず、何もかもすべてを包み込むようにして、広くて逞しい胸にしっかりと抱き寄せてくれる。
たちまち穂乃香の胸は高鳴り熱くなる。
それらに呼応でもするかのように、奏の身体からもトクトクと高鳴る鼓動と体温とが伝わってくる。
「凄く……熱い」
――もしかして熱がぶり返したんじゃ……。
案じた穂乃香が思わず零した呟きを拾った奏が、端正な相貌に苦笑いを湛えて自己申告してくる。
「この熱は穂乃香に欲情している証拠だから心配ないよ」
ストレートに告げられてしまうと、どう反応すればいいかがわからなくなる。
何よりこれから繰り広げられるであろう奏とのアレコレを連想してしまい、緊張感までもが浮上する。
奏と初めて過ごしたあの夜の記憶がないのだから無理もないだろう。
緊張感に苛まれた穂乃香は、頬を桜色にほんのりと染め上げ恥じ入ることしかできない。