フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
もしくは、秀でた嗅覚のせいで交際が長続きしなかっただけで、奏にはこういう経験が数え切れないほどあって、女性を喜ばせる手腕に長けているからなのかもしれない。
――そりゃあ、そうよね。こんなに素敵な人なんだもん。女性が放っておくわけがない。
ふとそんな思考が穂乃香の脳裏を掠めた。途端に、胸がキュッと強く締め付けられる。
ズキズキと痛いくらいだ。
穂乃香が胸の痛みに苛まれていると、奏の心配そうな声音が思考に割り込んできた。
「穂乃香?」
ハッとした穂乃香が奏に視線を投げると、不安げに揺らめく奏の瞳が待ち受けていて、かち合った刹那、バツ悪そうな奏から思いがけない言葉が飛び出してくる。
「悪い。年甲斐もなくがっつきすぎたようだな。穂乃香のことを優しくとろとろに甘やかすなんて言っておきながら、気遣ってやる余裕がないなんて、呆れるよな」
穂乃香が思考に耽っていたせいで、機嫌を損ねてしまった、と勘違いさせてしまったらしい。
奏に申し訳ないと思う一方で、奏をそうさせているのが自分なのだと思うと、あんなにも痛かった胸の痛みは、綺麗さっぱりどこかに吹き飛んでしまっていた。