フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
絶え間のない快感の緩やかな波の狭間で欲望とそれを阻む感情とがせめぎ合っている最中、愛蜜にまみれた形のいい唇に弧を描いた奏から意地の悪い声音が降らされた。
「穂乃香、俺に何か言いたいことがあるんじゃないか?」
「……べ、別に」
「そんなに物欲しそうな顔をしているのに、強情だな。なら、ずっとこのまま蜜を吸い尽くすまでだが、どうする?」
どうやら奏は、穂乃香の口から、〝奏自身で満たして欲しい〟と言わせたいらしい。
そうとわかっていながら、降参できるはずがない。
ムッとした穂乃香が奏をキッと強い視線で睨みつけた先には、予想に反して、何とも切なげな表情を湛えてこちらの様子を窺っている、奏の端正な相貌が待ち受けていた。
――な、何よ? 急にどうしたって言うのよ?
胸をズキンと鋭い痛みに襲われた穂乃香が困惑しているところに、表情同然の奏の切なげな声音が耳に届いた。
「あの夜は身代わりでも構わなかったのに、もう無理なようだ。あの夜、穂乃香が口にしたあの男の名前が頭から離れない。一度でいい。一度でいいから俺の名前を呼んでくれないか? そうしたら身代わりにでも何でもなってやる」
「ど、どうして、そこまでして……」
驚愕しつつも、そう口走ってしまってから穂乃香はハッとする。
――こんなの愚問だ。