フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
いくら好きな人のためとはいえ、身代わりにされて平気な人がいるわけがない。それでも身代わりになろうとしてくれているのは、それだけ好きでいてくれているってことだ。
そう理解していながら、奏の口からそれを聞きだそうだなんて、何て酷い女なのだろう。
――ううん、違う。奏への想いを告げる覚悟がないからって想いを秘めたまま奏の優しさに縋ってしまった時点で、酷い女確定だ。
奏への仕打ちにようやく気づいた穂乃香は、悔い嘆くことしかできないでいた。
そんな穂乃香の思考に、奏の穏やかなバリトンボイスが囁きかけてくる。
「穂乃香は俺が好みの匂いだけに惹かれていると思っているんだろうが、そうじゃない。はじめは、可憐な容姿と魅力的なスタイルでありながら、それを隠す穂乃香に、誰にも特殊な嗅覚のことを曝け出せずにいた自分とが重なって、親近感のようなものが湧いたのかもしれないが。あの夜、穂乃香と過ごす中で、本当は弱くて脆くて、誰かに甘えたいのを必死で抑えているのに気づいたんだ。そんな穂乃香のことが愛おしくてどうしようもなくて、この手でとろとろに甘やかしたいと思ったんだ。そんなこと思ったのは初めてで自分でも驚いたよ」
奏から初めて聞かされた思いがけない言葉の数々に、罪悪感に苛まれていたはずの心が温かなもので満たされてゆく。