フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
何とか意識を手放さずに済んだものの、絶頂の余韻から抜け出せず、夢現で恍惚の中を彷徨ったまま何の反応も示せずにいる。
「穂乃香に名前を呼んでもらえたのが嬉しくて、我慢できず悪かった」
そんな中、誰かが謝罪する声音が降らされた。同時に、穂乃香の顔や身体というように、至る所に甘やかなキスの雨が降り注ぐ。
甘やかなキスの合間にも、穂乃香の身体を気遣う優しい声音が絶えずかけられているようだが、よくは聞こえない。
重たい瞼を押し上げて確認するまでもなく奏だ。
――す、凄く気持ちいい。ずっとずっとこのまま社長の腕の中でいられたらいいのに。
達したばかりの穂乃香の身体を奏は労るように、甘やかなキスの雨を降らせ続ける。
奏の逞しい腕に包まれ恍惚に酔い痴れ微睡んでいた穂乃香の脳裏には、薄れてしまっていたはずのあの夜の記憶の断片がおぼろげに蘇ってくる。
奏から聞かされたように、酒に酔っていた穂乃香は奏を元婚約者だと思い込み、恨み言を浴びせていたようだ。
けれど奏は終始優しく穂乃香のことを宥め慰めてくれている。
元婚約者からは得られなかった、何もかもを包み込んでくれるような、奏の優しさに縋ってしまったに違いない。
それなのに、いくら記憶が曖昧だったからって、変態だなんて決めつけて、奏自身を見ようともしなかった。