紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
かりそめの新婚カップル

 奏の優しさに縋ってしまったあの夜から一ヶ月がすぎ、季節は夏真っ盛りの八月を迎えている。

 三ヶ月だった試用期間も満了し、一年という期限付き、しかも離婚前提の契約婚ではあれど、先月の七月吉日、入籍を済ませた奏と穂乃香は正式な夫婦となった。

 けれども穂乃香は奏への想いに気づきながらも、未だ奏に告げられないままでいる。

 なら入籍なんてしなければいいのに。そう思うだろうが、結婚しなければいけない状況に追い込まれてしまったのだから仕方ない。

 なぜなら、毎度の如く余計なお節介……もとい、執事兼秘書としての仕事に並々ならぬ矜持をお持ちになっているらしい柳本によって、奏のご両親にあるご報告がなされてしまったからだ。

 あるご報告というのは、これまでずっと浮いた話もなく縁談話にもスルーしてばかりだった奏が穂乃香との電撃的な出会いを経て、結婚を前提とした同棲生活に踏み切った、というものだ。

 しかも、取引先である浅葱は竹野内家へのゴマスリのために、わざわざ自宅にまで出向いて。

『いいご縁に恵まれたようで羨ましい限りですなぁ。いやあ、おめでたいことでなによりです』

 そう言って、お祝いの品まで進呈したのだという。

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