フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
本音というのは、三十五歳までに跡継ぎを設けなければいけないという、あの暗黙のルールに関するものだ。
あれは、都内でも有数の格式高いホテルの一室で執り行われた結納と食事会を終えて、奏と共にホテルのエントランスで互いの親族を見送っていた際のことである。
雪と樹とが先にタクシーへと乗り込み帰路についた後、奏の両親が迎えの車に乗ろうかとしていた時のことだ、
奏と両親との間で繰り広げられたやり取りから、あのルールが竹野内家にとってどれほど重要であるのかを窺い知ることとなった。
「結納も終わったし、やれやれねぇ、あなた」
「あぁ、そうだなぁ。奏、これまで私たちに散々心配かけてきたんだ。親孝行だと思って、出来るだけ早く孫の顔を見せなさい」
「……結納が終わったばかりだというのに、もう孫の話ですか」
「何を言ってるんだ。お前はもう三十三なんだぞ。キョロキョロしていたらあっという間だ。親父に報告する私の身にもなりなさい」
「……はいはい。わかっていますよ。では、気をつけてお帰りくださいね」
「こら、奏」
両親というより、父親のほうがあのルールのことを気にしている風だった。
父親の口振りだと、奏の祖父にそのことで口やかましく言われているようだ。