フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 昨日の終業間際、奏が席を外していた際のことだ。

「もう籍も入れたことですし、そろそろ奏様の気持ちに応えてあげてもいいのではないですか。そうでないと、穂乃香さんのためにあのルールをなくそうと尽力されている奏様がお可哀想です」
「どういうことですか?」

 柳本からの予期せぬ言葉に問い返した穂乃香は、奏が自分のためにあのルールをなくそうと穂乃香の知らないところで動いていたことを知る。

 なんでも奏は祖父と父親に、「穂乃香にあんな馬鹿げたルールのことで余計なプレッシャーをかけたくない。そんなに後継者が大事だというなら俺はこの家から出ますから、そのおつもりで」そう言い渡し、いつ家を出ることになってもいいように着々と準備を進めているらしい。

 そうして現在、祖父と父は、奏にどれほどの覚悟があるのかを見定めているところなのだという。

 けれど奏からではなく、奏を神のように崇める柳本から聞かされた言葉を鵜呑みにはできなかった。

 その理由の一つには、あの夜以降、奏が穂乃香に一切触れようとしなくなったというのもある。

 穂乃香は身勝手にも、それを寂しいと感じさえしていたのだが、奏はそうではないのかもしれない。

 つまりは、それほどの気持ちではないのではないか。そんな想いもあったからだ。

 でも奏も穂乃香と同じ想いでいてくれた。

 だからこそ、キスだけでタガが外れてしまったかのように、こんなにも狂おしいほどに熱烈に穂乃香を求めてくれているのに……。裏なんてあるはずがない。なのにどうしてもっと早く気づけなかったのだろう。
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